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ある日、いぶきは
お散歩中にたんぽぽさんを見つけました。

「・・・」
何事かを考えているいぶき。
しばらくすると
いぶきは言いました。

「夫、よさげなたんぽぽさんを1本、いぶきままへのお土産にしましょう」
いぶきは暑くて早く帰りたいのをガマンして
夫と一緒に一番きれいなたんぽぽを見つけると
「たんぽぽさん、お家に一緒に来てくれますか」 とお願いしました。
するとたんぽぽさんは
「私でお役に立つなら・・・そのかわり
なんだか怖そうな夫さんの手で運ばれるより
いぶきさん、あなたに運ばれてお家へ行きたいわ」 と言いました。
いぶきは考えました。
「僕は夫みたいに手に持って歩くことができない。
どうしたらいいんだろう・・・」
そしていぶきは思いついたのです。

「ではたんぽぽさん、僕の背中にどうぞ。
僕の背中は毛がふかふかで
とっても気持ちいいですよ」
たんぽぽさんはいぶきの背中から
いつもは見れない遠くの景色を見ることができて
とっても嬉しそうにしています。

「たんぽぽさん、もうすぐお家ですからね」
いぶきは途中、3階のお家を2階と間違えて
ダックスのワンコに吠えられましたが
なんとかお家へたどり着くことができました。
そして・・・

「いぶきまま、たんぽぽさんですよ・・・あ!」
いぶきは自分の背中からおろしたたんぽぽさんが
あまりに元気がなさそうに見えたので
とても驚きました。
「あぁ、こんなことなら
あのままあの場所で、咲かせていた方がよかった」 と
悲しい気持ちになりました。
けれどたんぽぽさんは言いました。
「私はあの場所で仲間と一緒に咲いていて
寂しいと思ったことはありませんでした。
でもいつか、遠くの世界を見てみたいとも思っていました。
たんぽぽも大人になると綿毛になって
遠くへ行けるんだよって仲間が教えてくれたけれど
私はもっと早く
遠くの世界を見たいと思っていました。
私は今日、いぶきさんの背中から
私の知らない人を見
私の知らないものを見て
とても幸せでした。
だからありがとう。
いぶきさんに会えて
私はとてもうれしかった。
そして私は、その記憶を持って
春の土の上に帰ります」

「こんなに元気がなさそうに見えるけれど
たんぽぽさん、大丈夫?」
「大丈夫。私達植物は
命をつないで、いい記憶ををつないで
ちゃんと新しい命の中に
生き続けることができるのだから」
たんぽぽさんはそう言って
いぶき家のベランダから
はらはらと、まるで小鳥が舞うように楽しげに
地面へと下りていきました。
いぶきはそれを眺めながら
「来年、僕は11歳になっているけれど
きっと元気で、またたんぽぽさんに会おう」
と思ったのでした。




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